5月
少なくとも小学生から中学生頃までは雨の方が好きだった。
一つには、運動がものすごく苦手だったので「体育が室内になればいいな」と願っていたのだと思う。でも、そのことは別としても確かに雨の方が好きだった。
なぜかって?
心理学では雨音は心を落ち着かせるのによいというが、そんな話はどうでもいい。確かに雨音を聞くのは大好きだったのだから。
大粒の雨がスコールのごとくたたきつけるように降るときが特によい。絶えることのない雨音が、浮き足だった気分を平らになだめてくれる。こういうときは、物陰に隠れているいつもは見えない何かに気づくのだ。
朝から黒雲につつまれたひどいどしゃ降りの日、木造の校舎、教室の中、まるで日が落ちた後の夕闇のような日はさらによい。大雨の作る妙な薄暗さは、夕闇の不思議な気分を朝の教室へ連れてくる。一日この不思議が気分が続くかと思うと、内心わくわくしていた。
一歩先をも覆い隠す 雨のカーテンの向こうに、何かを見ていたのだと思う。
今では快晴も雨もそう変わることではない。どちらもそれなりによいとしか言えなくなってしまった。
でも確かに雨が大好きだったことを思い出した。
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(追記部原文まま 1997/5頃初出)